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コトノハメディア135 コトノハがわかる

アート推考2「僕がHBギャラリーに通うわけ」

 表参道ヒルズを過ぎてアップル手前を左に入り、まい泉手前を右に曲がるとHBギャラリーがあります。ここはイラストレーターのギャラリーですが、僕は忙しくてもなるべく毎週、伺う(観る)ようにしています。
 
「作品が良くなれば何をやってもいいんだ!?」とは(制作)現場で皆がよく教わる(考える)事です。結果、ミクストメディアであったり、現代美術があるわけです。じゃあ、作家本人は、作品を良くするために何でもやってるか?といえば、そんな大変な事はなかなか出来ません。「作品が良くなれば何をやってもいいんだ!?」とは、=森羅万象(宇宙)を対象としますから、とりとめがなくなって、気をつけないと精神に悪影響が出ます。
 
 ところで、日本の美大に入るには、実技試験を受ける前に、科を決めなければいけません。デザイン科、油科、日本画科、彫刻科、工芸科などです。受験にはデッサンの実技があるので、美大予備校に通いデッサンを教わります。そこで描くデッサンですが、科によって微妙に違います。日本画科のデッサン、彫刻科のデッサン、デザイン科のデッサンなど微妙に違います。どれが一番良いのかは、いい絵というものに沢山のタイプがあるように、いいデッサンもいろいろです。僕は、デザイン工芸科だったのですが、他の科の先生に観て頂いたのは、油科の冬期講習のみで、他の科がどのようにデッサンを教えているのかほとんど知りません。ところが、科によって明らか(微妙)にデッサンが違うのです。日本画科は将来、日本画を描くためのデッサンを教わっているように感じます。
 美大に入りました。そこではそれぞれの科の技術を教わります。日本画科だったら顔料、彫刻科は石切場、油科はフレスコ画、工芸科は金属絞りや土練りや機(はた)織りや草木染めなどです。技術をきちんと伝承しなければ、日本の素晴らしい芸術が途絶えてしまいます。よって岡倉天心はその伝承に力を注ぎました。

 問題は、科では技術の伝承を重要視してるので、技術屋さんのような仲間うちが出来上がり、デッサンが科内で似るように、作品も科内で似てきて、例えば日本画科の出身者は、皆さん草木を描くのがとても上手くて絵が似ている。作品発表は、仲間の伝手(つて)でギャラリーを決めるため、上手くて似たような絵がいつも同じような場所で発表されている。例えばガラスの作家さんは、ガラスの技術自慢みたいな…。

 HBギャラリーが面白いのは、芸大の油科や彫刻家出身のイラストレーターが発表しているところです。それがどうした!?と思われるかもしれませんが、佐藤忠良や舟越保武や(舟越)桂さんのデッサンは知ってますが、芸大彫刻家出身のイラストレーターの絵など今まで観た事がない。実際に観てみると、確かに、デザイン科で教わってきたであろうイラストレーターの美しく繊細で(いい意味で)ひ弱な絵とは、ちょっと違う発見があったりして楽しいのです。勉強にもなるし。

 なぜHBギャラリーには、そのような作家が集まるかといえば、「作品が良くなれば何をやってもいいんだ!?」という姿勢(精神)が実直に開かれているような空気があるように思われます。そんなの当たり前じゃないか! 他にも作家がインスタレーション(パフォーマンス)してるギャラリーが沢山あるでしょ? と言われるかもしれませんが、インスタレーションはインスタレーションとして(よしとして)、実際に、イラストレーターのギャラリーとしての完成度を持ちつつ「何をやってもいいんだ!?」という空気も持つのは、そんなに簡単ではないと思われます。「何をやってもいいんだ!?」という事は「何をやっても許される!?」=作品レベルが落ちるからでは? インスタレーション(パフォーマンス)が面白く感じない時があるのはそのためです。
 
 という訳で、僕のHBギャラリー通いは続きます。
 出会いを求めて(Lee U-Fan)。

《リンク:HBギャラリー

大村タイシ

アーティスト。多摩美術大学卒業。『街の手帖 池上線』で表紙イラストを担当。

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