小説グリッチ
図書館に通うのが日課となっていた主人公のわたしは、ある日、メガネをかけた女性にさらわれ、とあるホテルの一室に幽閉されてしまう。その頃のわたしは、デザイナーとしての仕事を失い、友人で編集者のNに自分の書いたノートをなんとか出版してもらいたいと何度も会合を重ねていた。そのノートには、空想と妄想が混在したグラフィックや文章が書かれていた。
一方、カナダにいる音楽家の里子は、彼氏であるポールの父親が開発したニンジン「スペシャル」を世に広めようと、日本へと向かう飛行機に乗っていた。
偽造紙幣事件の首謀者となった「少女」と、異次元の中に存在する植物店「もーむ」「こびと」…。現実と妄想が交叉し、共感覚的な体質を持つ主人公と里子が過ごす世界で繰り広げられるグリッチな物語。